海を渡る古着——日本から輸出される服の行き先
資源回収の日に出した服や、回収ボックスに入れた服。その一部は国内で売られるのではなく、コンテナに積まれて海を渡ります。日本を出た服がどこへ行き、どう使われているのかをたどります。
着なくなった服を「資源」として出したあと、その服がどこへ行くのかを知る機会はあまりありません。国内の古着屋に並ぶものもありますが、実はかなりの量が海外へ向かっています。環境省がまとめた「2024年版 衣類のマテリアルフロー」では、国内に新しく供給される衣類が年間約82万トンあるのに対し、回収・選別を経て中古衣料として海外へ輸出される量は約9万トンと推計されています。服の行き先のひとつとして、輸出は小さくない位置を占めているようです。
回収された服は、まず「故繊維業者」に集まる
環境省が2014年度にまとめた「中古衣類を対象とした海外でのリユース実態調査」によると、資源回収や集団回収に出された衣類は、収集業者や古紙問屋を経て、故繊維業者と呼ばれる事業者に運ばれるのが一般的とされています。小売店の下取り品や、リユースショップの売れ残りもここに集まります。
故繊維業者は、集まった衣類を選別し、国内向けに販売するものと海外へ輸出するものに分けていきます。わたしたちが袋に入れて出した服は、ここで初めて「次の行き先」が決まることになります。
いちばんの行き先はマレーシア
同じ調査では、財務省の貿易統計をもとに輸出先も整理されています。中古衣類の輸出量は2004年の約9万1千トンから2013年には約21万6千トンへと増え、2013年の実績では輸出量の約48%がマレーシア、約21%が韓国に向かっていました。ベトナム、フィリピン、パキスタン、カンボジアなども上位に挙がっています。
なお、この貿易統計の数値と、冒頭のマテリアルフローの推計値は、年代も集計の方法も異なります。単純に並べて増減を比べることはできない点にご注意ください。
選別してから、さらに次の国へ
マレーシアが多い理由について、調査は興味深い点を指摘しています。マレーシアや韓国向けの輸出単価は、ほかの国に比べて安い水準でした。これは、細かく選別する前の状態で輸出され、輸出先の国で選別されているためと考えられています。実際にマレーシアには、日系企業の多くが選別の拠点を置いているとされています。
選別された服は、その国で着られるだけではありません。調査では、マレーシアに入った中古衣類のうち相当量が、選別後にほかの国へ再輸出されている状況が示されています。日本を出た服の旅は、最初の港で終わらないことが多いようです。
すべてが「服」として着られるわけではない
選別の中身についても、事業者へのヒアリング結果が紹介されています。回収された中古衣類のうち、リユースできるものが約6割、ウエスになるものが約2割、繊維にほぐして使う反毛が約1.5割で、残りは廃棄されていると考えられる、という内容です。リユース向けの服は、性別・年齢・用途・季節・色などによって、少ない事業者でも約50種類、多い事業者では約1,500種類に分けられていました。
一方で、世界に目を向けると、輸出された古着が受け入れ先で使いきれず、負担になっている地域があることも報じられています。ガーナのカンタマント市場や、チリのアタカマ砂漠の話は、その一例です。輸出は服の寿命を延ばす手段である一方、送り出した先で何が起きているかまで含めて考える必要があると言えそうです。
わたしたちの手放し方へのヒント
海を渡る古着の流れを見ていくと、手放す側にできることも見えてきます。選別の現場では、着られる状態の服ほど次の持ち主に届きやすくなります。洗って乾かしてから出す、回収のルールに沿って出す、といった小さな手間が、服の行き先を左右するのかもしれません。そして、長く着られる服を選び、手元で着続けること。海を渡る前の時間を延ばすことも、服の寿命を延ばすひとつの方法です。
掲載時点の情報です。輸出量や割合は推計・調査時点の値で、内容には諸説ある場合があります。