LONG LIFE STORY売れ残りの行き先

売れ残りを捨てない法律——EUの衣類廃棄禁止

売れ残った服を廃棄せず、次の行き先へ回すことを求める法律がEUで動き始めました。何が決まり、誰が対象で、なぜ必要とされたのかを、公式の発表をもとに整理します。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 廃棄の現実

お店の棚に並んだものの、最後まで売れなかった服は、そのあとどうなるのでしょうか。値下げやアウトレット、寄付などで次の行き先が見つかるものもあれば、倉庫を空けるために廃棄されるものもあるとされています。この「一度も着られないまま捨てられる服」を、法律で止めようとする動きがヨーロッパで進んでいます。今回は、EUで始まった売れ残り衣類の廃棄禁止について、公式に発表されていることを中心に整理します。

EUの売れ残り衣類廃棄禁止とは

土台になっているのは、2024年に成立したEUの「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR、規則(EU)2024/1781)」です。製品を長く使えるように設計段階から基準を設ける枠組みで、その中に売れ残った衣類・服飾小物・履物の廃棄を禁止する規定が盛り込まれました。あわせて、企業が売れ残り品を廃棄した場合に、その量などを開示する義務も定められています。

欧州委員会は2026年2月9日、この規定を運用するための細かなルールを採択しました。ひとつは、例外的に廃棄が認められる場合を定めた委任規則です。安全上の理由や、製品が損傷している場合などが例として挙げられています。もうひとつは、廃棄した売れ残り品の量を開示するときの統一された書式を定めた実施規則で、こちらは2027年2月から適用されるとされています。

2026年7月から、まず大企業に

禁止と例外のルールは、2026年7月19日から大企業に適用されています。中規模の企業には2030年から適用される見込みです。欧州議会の立法概要によると、零細企業と小規模企業はこの廃棄禁止と開示義務の対象外とされています。守られているかどうかの確認は、各加盟国の当局が担います。

欧州委員会は、廃棄の代わりに取るべき道として、在庫管理や返品対応の見直しに加え、再販売、リメイク(再製造)、寄付、再使用を挙げています。売れ残りが出ないように仕入れや生産の量を考えること、出てしまった服には次の着る人を探すこと。この2つを企業に促す仕組みと言えそうです。

一度も袖を通されないまま捨てられる服を、まず止める。

なぜ「売れ残り」が対象になったのか

欧州委員会の発表では、ヨーロッパでは毎年、売れ残った繊維製品の約4〜9%が、一度も着られないまま廃棄されていると推計されています。この廃棄によって排出されるCO2は約560万トンで、スウェーデンの2021年の正味排出量にほぼ匹敵するとされています。

国ごとの例として、フランスでは毎年約6億3,000万ユーロ相当の売れ残り品が廃棄され、ドイツでは返品された商品のうち毎年約2,000万点が捨てられているという数字も紹介されています。ネット通販の返品は、いったん倉庫に戻ってから検品や再出品に手間がかかるため、廃棄に回りやすいという事情があるようです。

服をつくるには、綿花を育てる水や、糸を紡ぎ、染め、縫い、運ぶためのエネルギーが使われています。売れ残りを廃棄すると、それらがすべて一度も使われないまま終わることになります。着られた服が寿命を迎えて捨てられるのとは、少し意味合いが違う廃棄だと言えるかもしれません。

先に動いていたフランスのAGEC法

EUより早く同じ問題に取り組んでいたのがフランスです。2020年の「循環経済のための廃棄物対策法(AGEC法)」によって、売れ残った新品の非食品を廃棄することが原則として禁止されました。フランス経済・財務省の解説によると、2022年1月1日から順に適用が始まり、遅くとも2023年12月31日までにすべての品目へ広げられることになっていました。事業者は売れ残り品を再使用・再利用・リサイクルに回す必要があり、違反した法人には1件あたり最大1万5,000ユーロの罰金が定められています。

フランスが衣類以外も含めて幅広く対象にしたのに対し、EUの規則はまず衣類・服飾小物・履物に絞って始まりました。対象の品目は今後見直される可能性もあるとされています。

法律ができても、売れ残りそのものがなくなるわけではありません。行き場を探す服が増えれば、寄付や再販売の受け皿をどう整えるかも課題になっていきそうです。一方で、古着屋に並ぶデッドストックのように、売れ残った服が何十年か後に誰かの一着になることもあります。捨てずに次の手へ渡すという考え方が、いよいよ制度として形になり始めたところだと思います。

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