LONG LIFE STORY混ざった繊維

混紡という難題——混ざった繊維がリサイクルを難しくする理由

着やすさや乾きやすさのために、服の多くは複数の繊維を混ぜてつくられています。その「混ざっていること」が、手放したあとのリサイクルでどんな壁になるのかを、確認できた数字とともに見ていきます。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 廃棄の現実

手元の服の洗濯表示を見てみると、「綿60% ポリエステル40%」「綿95% ポリウレタン5%」といった書き方がよく見つかります。ひとつの糸や生地に複数の繊維を混ぜることを混紡(または交織・交編)と呼び、いまではごく当たり前のつくり方です。ところが、この当たり前が、服を手放したあとの段階では大きな難題になっているとされています。今回は、混ざった繊維がなぜリサイクルを難しくするのかを整理します。

混ぜるのには、ちゃんと理由がある

混紡は、素材それぞれの長所を組み合わせるための工夫です。綿は肌ざわりがよく汗を吸いますが、しわになりやすく乾きにくい面があります。そこにポリエステルを混ぜると、しわが寄りにくく、速く乾き、丈夫になります。ポリウレタン(エラスタン、スパンデックスとも呼ばれます)を数%加えれば、伸び縮みして体の動きに沿う生地になります。

素材の生産量を見ても、合成繊維の存在感は大きくなっています。繊維業界の非営利団体テキスタイル・エクスチェンジの報告書では、2023年に世界で生産された繊維は約1億2,400万トンで、そのうちポリエステルが約57%を占めたとされています。綿と合成繊維が一枚の服の中で出会うのは、ごく自然な流れだといえそうです。

リサイクルの方法は、素材ごとに違う

難しさの根本は、繊維を原料に戻す方法が素材ごとにまったく違う点にあります。ポリエステルは化学的に分解して樹脂に戻す方法が研究されていますし、綿はパルプ状に溶かして再生セルロース繊維の原料にする方法があります。しかし、両方が絡み合った糸のままでは、どちらの方法にもそのままでは入れられません。

環境省が行政回収された古着を調べた資料では、単一素材の服は約27%にとどまり、残りの多くは2種類以上の素材を組み合わせたものでした。資料はこの複合化を、繊維から繊維へのリサイクルを妨げる大きな要因の一つとしています。布をほぐして綿状に戻す機械的なリサイクルも、混ざった素材を分けることは得意ではないとされています。

とくに扱いが難しいとされるのが、ポリウレタンです。2024年1月の業界メディアの記事は、英国の調査会社テキスタイルズ・インテリジェンスの報告書を紹介し、綿のTシャツにわずか1%のポリウレタンが入っているだけでも、リサイクルの選別工程で対象外になることがあると伝えています。分離に使われてきた溶剤(DMFやDMAなど)が有害であることも、課題として挙げられています。

着ているあいだの「ちょうどよさ」が、手放したあとの「戻しにくさ」になっています。

表示の素材と、実際の素材が違うことも

もう一つの壁が、選別の段階です。リサイクルするには、まず服を素材ごとに仕分ける必要がありますが、洗濯表示の情報がいつも正確とは限りません。オランダの非営利団体サークル・エコノミーが、近赤外線で素材を判別する選別機を使って1万着以上を調べた研究では、約41%のケースで、表示された素材構成が実際と食い違い、消費者が誤解するおそれがあると報告されています。ずれが大きかったのは、複数の繊維を使った服、とくに綿とポリエステルの組み合わせだったそうです。

近赤外線による自動選別は人の目より速く仕分けられる技術として期待されていますが、混紡比率を正確に読み取ることにはまだ限界があるとする研究もあります。混ざった服は、分ける前の「見分ける」段階からすでに手間がかかっているようです。

分ける技術は、少しずつ前へ

それでも、混紡を分ける技術は少しずつ実用に近づいています。香港の研究機関HKRITA(香港紡織及成衣研発中心)はH&M財団と共同で、熱と水と少量の生分解性の薬剤を使い、綿とポリエステルの混紡から綿を粉状のセルロースに分解して、ポリエステルを取り出す「グリーンマシン」を開発しました。2020年にはインドネシアの繊維メーカーで、1日あたり約1.5トンを処理できる産業規模の設備が導入されたと報じられています。

ポリウレタンについても、より害の少ない溶剤で分離する研究や、リサイクルしやすい新しい伸縮素材を試す取り組みが進められています。ただ、どれも世界中の古着の量に比べればまだ小さな規模で、回収や費用の仕組みと合わせて育っていく段階にあるといえそうです。

技術が追いつくまでのあいだ、混紡の服を長く着ること、古着として次の人へ渡すことは、分ける手間をかけずに服を生かせる確かな方法です。そして新しく服を選ぶときに、洗濯表示の素材欄をひと目見てみる。それだけでも、その服がいつか手放されたときの行き先を想像するきっかけになるかもしれません。

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