つくった側が回収する仕組み——衣類のEPR(拡大生産者責任)
服が捨てられたあとの費用を、つくって売った側が負担する仕組みがあります。フランスで始まり、EU全体へ広がろうとしている衣類のEPRについて、公式の発表をもとに見ていきます。
服を買うとき、値札には生地代や縫製代、運賃やお店の取り分が含まれています。けれども、その服が着られなくなったあとに回収し、仕分けし、リサイクルするための費用は、これまで値札にはほとんど含まれてきませんでした。この「服の後始末の費用」を、服をつくって売った側に負担してもらおうという考え方があります。拡大生産者責任(EPR)と呼ばれる仕組みです。
拡大生産者責任(EPR)とは
EPRは Extended Producer Responsibility の略です。経済産業省の審議会資料では、製品の生産者が、生産から流通、消費、廃棄、リサイクルまでのライフサイクル全体を通じて、その製品の環境への影響に責任を負うべきという考え方として説明されています。生産者に、長く使えてリサイクルしやすい製品づくりを促す狙いもあるとされています。
日本でも、この考え方はすでに身近なところに入っています。容器包装リサイクル法は、日本でEPRの考え方を取り入れた最初の法律とも言われ、市町村が分別収集を、事業者が再商品化を担う役割分担になっています。家電リサイクル法では、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機について、小売業者に収集を、製造業者に引取りと再商品化を義務づけています。この考え方を衣類に当てはめたのが、今回取り上げる制度です。
先に始めたフランスの衣類EPR
衣類のEPRをいち早く制度にしたのがフランスです。2007年の財政法で、繊維製品を市場に出す事業者に財政的な責任を負わせる原則が導入されました。対象は衣類、家庭用リネン、靴で、フランス語の頭文字から「TLC」と呼ばれています。2009年には、業界の事業者がつくった団体 Eco TLC が国の承認を受け、本格的に動き始めました。
フランスで服を売る企業は、売った量に応じてエコ拠出金を団体に支払います。団体はそのお金を、回収した服を仕分けし、再使用やリサイクルに回す事業者への支援に充てます。2009年の開始時点では、仕分けした量のうち70%以上を再使用・リサイクルに回す事業者に、1トンあたり69ユーロを支払う設計だったと伝えられています。
Eco TLC は2020年に Refashion へ名前を変え、2023年から2028年までの新しい承認期間に入っています。Refashion の公表によると、2024年には約27万2,000トンの衣類・リネン・靴が回収され、約62万8,000点の修理が支援の対象になりました。一方で、仕分け事業者からは「実際の仕分けコストに支援が追いついていない」という声も上がっており、制度は運用しながら見直しが続いているようです。
2028年までにEU全体へ
このフランス型の仕組みを、EU全体に広げる法律がすでに動いています。2025年に改正されたEU廃棄物枠組み指令(指令(EU)2025/1892)は、2025年10月に発効しました。欧州委員会によると、加盟国は20か月以内に国内法を整え、30か月以内に衣類と靴のEPR制度を立ち上げることが求められています。期限は2028年4月ごろにあたります。
新しいルールでは、衣類や靴をEU市場に出す生産者が、製品ごとに料金を支払い、そのお金で使用済み繊維の回収、仕分け、再使用、リサイクルの費用をまかないます。料金は一律ではなく、耐久性やリサイクルのしやすさといった基準に応じて変える「エコ・モジュレーション」が取り入れられます。EUの外にある企業やネット通販で販売する企業も対象に含まれるとされています。
背景には、ヨーロッパの繊維ごみの多さがあります。欧州委員会の発表では、EUで2019年に発生した繊維廃棄物は約1,260万トンで、再使用やリサイクルのために分別回収されたのはそのうち約5分の1にとどまっていました。
古着の世界にとっての意味
EPRは、古着の流れにも関わってきます。改正指令では、古着の回収を手がける社会的企業(ソーシャル・エコノミー)が独自の回収を続けられるよう配慮されています。また、分別回収された繊維は「廃棄物」として扱われ、国外へ送る前に仕分けを済ませることが求められるようになりました。仕分けされないまま海外へ送られ、行き先で処理しきれない服が積み上がる、という問題への対策のひとつと見られています。
服を売った企業が後始末の費用を払うようになれば、その費用はいずれ服の値段にも少しずつ反映されていくかもしれません。それは、これまで見えにくかった費用が値札に現れる、ということでもあります。すでにある服を長く着ることや、古着を選ぶことは、その後始末をもう少し先へ延ばすことにつながります。制度が整っていくのと同じ時間の中で、手元の一着とどう付き合うかも、あらためて考えてみたいところです。
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