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ウエスになる服——着られなくなった先の使われ方

穴があき、色があせ、もう誰も着られなくなった綿の服。その一部は四角く裁断され、工場で機械の油を拭く布「ウエス」として、もうひと働きしています。服の一生の、最後の場面を見ていきます。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 直す・めぐらせる

古着の話というと、ヴィンテージとして何十年も着られる服に目が向きがちです。けれど、回収された服のすべてが次の持ち主に届くわけではありません。首まわりが伸びたTシャツ、すり切れたシーツ、穴のあいたワイシャツ。服としてはもう役目を終えたものが、形を変えて使われる道があります。そのひとつが、工場や整備の現場で使われる拭き布「ウエス」です。

「ウエス」という名前の由来

ウエスは、機械の油や汚れを拭き取るための布のことです。語源は英語の「waste(くず・ぼろ)」で、それがなまって「ウエス」と呼ばれるようになったとされています。英語では「wiping rag」や「wiper」とも呼ばれます。

原料になるのは、主に家庭から回収された古着や古布です。素材は基本的に綿が選ばれます。洗いざらしの綿は油分が抜けていて、新しい布よりも油をよく吸うといわれているためです。新品では出せない「使い込まれた布の性質」が、ここでは長所になります。

明治の船から始まった需要

繊維リサイクル会社のナカノ株式会社がまとめた業界の歴史によると、日本でウエスの需要が本格化したのは明治10年代の半ばごろで、日本郵船や大阪郵船といった船会社で使われたのが始まりとされています。蒸気船の機関室では、機械の油を拭く布が欠かせなかったのでしょう。

その後、工業化とともに需要は広がり、明治の末にはアメリカへの輸出も始まりました。昭和に入ると輸出品として存在感を増し、昭和10年前後には日本の主要な輸出品目の10位前後に入っていたと伝えられています。家庭の古布が、海を渡って工場で使われていた時代がありました。

「くず」という意味の名前を持ちながら、ウエスは長いあいだ、産業を下から支える布でした。

回収された服が、ウエスになるまで

回収された古着は、素材や色、状態によって細かく選別されます。まだ着られるものは中古衣料として国内外へ、ウールなどは綿状にほぐす「反毛(はんもう)」の原料へ、そして綿を中心とした着られないものがウエスの原料へと分かれていきます。この3つは、古繊維の主な行き先とされています。

ウエスにする工程では、ボタンやファスナーなどの付属品を取り除き、使いやすい大きさに裁断します。機械の表面を傷つけないよう、硬い部品を外すことが大切だとされています。白いワイシャツやシーツからは白いウエス、Tシャツやデニムからは色物のウエスというように、元の服によって種類も分かれます。

数字で見る、服の行き先

環境省の調査では、2020年に家庭や事業所から手放された衣類は約78.7万トンと推計されています。そのうち約64.8%にあたる約51.0万トンが廃棄され、リユースは約19.6%(約15.4万トン)、リサイクルは約15.6%(約12.3万トン)とされています。家庭から出た衣類のうち、ウエスや反毛として再資源化された量は約6.6万トンと示されています。

ウエスは使い終わると、多くの場合そのまま処分されます。その意味で、ウエスは服の「最後の役目」といえるかもしれません。それでも、ごみとして手放されるのに比べれば、布としてもうひと働きしてから役目を終えることになります。

家でもできる、最後の使い道

ウエスは工場だけのものではありません。着られなくなった綿のTシャツやタオルを、はさみで手のひらほどの大きさに切っておけば、家庭でも掃除用の布として使えます。油汚れのついたフライパンやコンロを拭くのに向いているとされています。

服を長く着ることと同じくらい、着終わったあとの行き先を考えることも、服との付き合い方のひとつです。お気に入りのTシャツが最後に一枚の布として台所を拭いて終わるなら、それも服の寿命をまっとうした姿なのかもしれません。

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