ジーンズのリペア——当て布とミシンで穴を直す
膝に穴があいたジーンズは、捨てるか、そのまま穿くかの二択だと思われがちです。けれども裏に布を当てて縫い込めば、もう何年も穿けます。直し跡も、そのジーンズの履歴のひとつになります。
この連載の最初の回では、リーバイス501がなぜ長く生きられるのかを見ました。丈夫な綿のデニムと、リベットで補強されたつくり。けれども、何十年も残ってきたヴィンテージのジーンズを手に取ると、多くの場合どこかに直された跡があります。膝の裏の当て布、股の内側の細かなステッチ。今回は、その直し方の話です。
ジーンズはどこから傷むのか
ジーンズが傷みやすい場所は、だいたい決まっています。膝、股の内側、お尻、ポケットの口、ベルトループ。どれも、曲げ伸ばしや擦れが繰り返しかかるところです。いきなり穴があくというより、まず生地が少しずつ薄くなり、白っぽく透けてきて、最後に糸が切れて穴になります。
つまり、穴になる前に気づけるということでもあります。生地が薄くなってきた段階で補強しておけば、直す範囲も小さく済みます。リーバイスの直営店に併設されたテーラーショップでも、修理メニューに「シート&クロッチ・リペア」として、擦り切れたお尻や股を補強して服の寿命をのばす修理が挙げられています。傷みやすい場所が決まっているからこそ、直し方も定番として用意されているのです。
当て布と、ミシンの往復縫い
ジーンズの穴の直し方には、大きく分けて二つの考え方があります。ひとつは、穴の上や下に布を当てて覆う当て布(パッチ)。もうひとつは、穴の裏に薄い布を当てたうえで、その上からミシンで細かく何度も往復して縫い、生地そのものを縫い固めていく方法です。米Popular Scienceの記事では、プロの店は専用の工業用ミシンを使う一方、家庭用の一般的なミシンでも、生地の目に沿ってジグザグ縫いを重ねていけば実用的な仕上がりになると紹介されています。
リーバイスのテーラーショップの説明では、ダーニング(繕い)を「薄い当て布を使い、デニムの斜めの織り目に沿って縫うことで、裂けや穴を直すこと」としています。デニムは綾織りで、表に斜めの畝が走っています。その向きに沿って縫い目を重ねると、直した部分がまわりの生地になじみやすくなるという考え方です。
家庭で試す場合の手順も紹介されています。家電Watchの記事では、アイロン接着タイプの補修布を裏から貼り、表からミシンでジグザグに縫い、さらに縦方向にも縫うと丈夫になると説明されています。穴だけでなく、まわりの薄くなった部分まで覆っておくと、すぐ隣がまた破れるのを防げるそうです。補修布は角を丸く切っておくと、はがれたときに肌に当たりにくくなります。
隠すか、見せるか
糸の色を選ぶときには、ひとつの分かれ道があります。デニムと同じ色の糸を使えば、直した場所はほとんど目立ちません。一方で、あえて色の違う糸を使えば、直し跡がワンポイントの模様になります。
リーバイスのテーラーショップのメニューには、日本の刺し子を「ランニングステッチで補強し、直した生地を前よりも丈夫にする装飾的な技法」として紹介する手縫いの修理も並んでいます。このサイトでも以前、刺し子やダーニングを取り上げましたが、繕った跡を隠さずに見せるという考え方は、ジーンズととても相性がよいようです。色落ちを「味」と呼ぶ服だからこそ、直し跡もまた、その一本だけの表情として受け取られやすいのかもしれません。
直しながら穿き続けるという選択
新しいジーンズを買うことが悪いわけではありません。ただ、一本の膝を直してさらに数年、場合によっては十年近く穿き続けられるなら、そのぶん新しく作られる負荷を使わずに済みます。日本では毎日およそ1,300トンの衣類が焼却・埋め立てされていると環境省は推計しています。穴があいた日が、そのまま手放す日にならなくてもよいはずです。
自分でミシンをかけるのが難しければ、リペアを受け付けているお店に相談する方法もあります。修理の前には洗濯しておく、どこまで目立たせたいかを伝える、といった準備をしておくと話が早く進みます。直し跡が増えるほど、そのジーンズはほかのどれとも違う一本になっていきます。
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