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ケンテ——織り柄に意味を込めたガーナの布

細い帯状の布を何本も縫い合わせてつくる、ガーナの織物ケンテ。柄の一つひとつに名前があり、糸はときに別の布をほどいて得られてきました。世代をこえて大切にされる布の成り立ちをたどります。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 受け継がれる布・民族衣装

ケンテの布を近くで見ると、一枚の大きな布ではないことに気づきます。幅10cmほどの細長い帯が何本も並び、その縁と縁が手で縫い合わされています。帯の上には、縦縞の区画と、幾何学模様の区画が交互に現れます。遠くから見ると市松模様のように見えるこの配置は、細い帯を横に並べてつなぐという、ケンテのつくり方そのものから生まれています。

「かご」と呼ばれる布

ケンテという名前は、アサンテの言葉で「かご」を意味するkɛntɛnに由来するとされています。織り目がかごの編み目に似ていることからそう呼ばれるようになった、という説明です。アカンの人々は、この布を「織った布」を意味するnwentomaとも呼んできました。

アサンテの口承では、ケンテはガーナ・アシャンティ州のボンウィレ村で生まれたと伝えられています。アサンテの王の織り手たちは、首都クマシに近いこの村に集められていたとされます。一方で、ガーナ東部のエウェの人々も独自の織りの伝統を持っており、どちらが先かについては今も議論があるようです。南部ガーナでの手織りの歴史は、考古学的には14〜18世紀ごろにさかのぼると考えられています。

細い帯を、縫い合わせて一枚に

ケンテは、木製の細い織機で織られます。伝統的には男性の仕事とされてきました。織り上がるのは幅3〜5インチ(約8〜13cm)ほどの細長い帯で、これを必要な枚数だけ並べ、縁同士を縫い合わせて一枚の布にします。

ある解説によると、男性用の布は約12フィート×6フィート(約3.7m×1.8m)で帯およそ24本、女性用は約6フィート×3〜4フィートで9〜12本ほどになるといいます。男性は左肩と左腕を覆い、右肩を出すようにして体に巻きつけ、女性は上下の巻き布として、ときにもう一枚を子どもを背負う布として使うと紹介されています。

体の寸法に合わせて裁つ服とは違い、ケンテは帯という単位でつくられ、まっすぐな布のまま体に巻かれます。着る人の体型に強く縛られない、という点では、以前紹介した着物やポンチョとも通じる考え方のように見えます。

細い帯を一本ずつ織り、並べて縫う。一枚の布は、たくさんの帯の集まりです。

ほどいた絹で、もう一度織る

ケンテの歴史で興味深いのは、糸の手に入れ方です。ガーナにはもともと絹をつくる蚕がいなかったため、鮮やかな色の絹は交易で持ち込まれた布に頼っていました。織り手たちは輸入された絹織物を丁寧にほどいて糸に戻し、それを細い帯の布に織り直していたと記録されています。

一度布になったものを糸に戻し、別の布として生まれ変わらせる。以前紹介したイタリア・プラートの再生ウールにも通じる発想が、王の布をつくる工程の中にあったことになります。その後、1930〜40年代ごろには、天然の絹に代わってレーヨンが使われるようになったとされています。

柄には名前と意味がある

ケンテの柄は数百種類あるとされ、それぞれに名前がついています。名前の由来は、ことわざ、歴史上の出来事、王や王母、植物、身近な道具などさまざまです。王アギェマン・プレンペ1世がまとったとされる「オヨコマン」、模様を重ねた豪華な布を指す「アドウェネアサ(アドウィナサ)」などが知られています。アドウェネアサは「わたしは技を出し尽くした」という意味だと説明されています。

布の柄は、着る人の立場や人柄、伝えたい思いを表すものとして選ばれてきました。かつては王族や身分の高い人々のための布とされ、手織りの絹のケンテは今も大変貴重なものとして扱われています。1960年ごろからは、ケンテ柄を機械で織ったりプリントしたりした布も出回るようになりましたが、織り手たちはそれを「ケンテ」と呼ぶことには抵抗があるようです。

技術ごと、次の世代へ

ケンテは、ガーナの外でも身近な存在になりました。アメリカなどでは、卒業式や教会の式典で、ガウンの上にケンテの帯を一本だけ肩にかける「ストール」として使われることがあります。一本の帯でも、その布の由来とつながることができる、という受け止め方なのかもしれません。

2024年12月、ガーナのケンテ織りの技術は、ユネスコの無形文化遺産(人類の無形文化遺産の代表的な一覧表)に登録されました。ボンウィレとアゴティメの共同体が、その担い手として挙げられています。登録されたのは布そのものではなく、布をつくる技術です。

服が長く生きるためには、丈夫であることのほかに、その布を大切に思う理由があることも大きいように思います。柄に名前があり、意味があり、誰が織ったかがわかる布は、簡単には手放されません。手もとの服にも、名前をつけられるくらいの理由がひとつあると、付き合い方が少し変わるのかもしれません。

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