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繊維から繊維へ——服を服に戻す技術はどこまで来たか

古着を回収に出せば、また服になる。そう思われがちですが、実際に服から服へ戻る割合はごくわずかです。何が難しく、どこまで進んでいるのかを確認します。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 直す・めぐらせる

回収ボックスに入れた服は、そのあとどうなるのでしょうか。「リサイクルされる」と聞くと、ほぐされてまた新しい服になる姿を想像するかもしれません。けれど実際には、服が服に戻る道はまだとても細いものです。今回は、使い終わった繊維をもう一度衣料用の繊維に戻す「繊維から繊維へ(fiber-to-fiber)」の技術がいまどこにあるのかを見ていきます。

服に戻るのは1%未満

エレン・マッカーサー財団は、世界全体で服の生産に使われた素材のうち、新しい服にリサイクルされているのは1%未満だとしています。多くは断熱材や詰め物、ウエス(工業用の雑巾)など、より価値の低い用途に回されたのち、最終的には焼却や埋立に行き着くと説明されています。

日本の状況も見てみます。環境省の調べでは、2022年に家庭や事業所から手放された衣類は約73.1万トン。そのうち約64%が廃棄、約18%がリユース、約17%がリサイクルに回ったと推計されています。ここでいうリサイクルには、布を服以外の製品に変えるものも含まれるため、服に戻る量はさらに限られると考えられます。

いちばんの壁は「混ざっていること」

服を服に戻すのが難しい理由として、繰り返し挙げられるのが素材の複合化です。綿とポリエステルを混ぜた生地、伸縮性のためにポリウレタンを加えた生地、さらにボタンやファスナー、プリント。一枚の服にはさまざまな素材が組み合わさっています。

環境省が行政回収された古着を調べた結果では、単一素材の服は約27%にとどまり、2種素材が約28%、3種素材が約19%、4種以上が約25%でした。環境省の資料は、この複合化を繊維から繊維へのリサイクルを妨げる最大の要因の一つとしています。

方法そのものにも限界があります。布を細かくほぐして綿のように戻す「マテリアル(機械的)リサイクル」は、エネルギーや水の使用が比較的少ない一方で、ほぐす過程で繊維が短くなり、糸や生地の品質が下がりやすいとされています。何度も繰り返すことはできず、混紡品から素材を分けることも得意ではありません。

服は、着るために混ぜられた結果、戻すことが難しくなっています。

化学の力で分子まで戻す

そこで期待されているのが、繊維を化学的に分解して原料の段階まで戻す「ケミカルリサイクル」です。

日本では、JEPLANが独自の「BRING Technology™」を開発しています。ポリエステルをいったん分子のレベルまで分解(解重合)し、染料などの不純物を取り除いてから再び重合することで、石油由来と同等品質の再生ポリエステル樹脂をつくる技術と説明されています。環境省の資料によれば、北九州市の響灘工場は年間1,000トンの生産能力を持ち、2017年に稼働を開始しました。ただし同社のサイトでは、この工場は2026年3月時点で運転を休止していると案内されています。

綿の側では、スウェーデンのRenewcell(リニューセル)が、綿を主とする古着や裁断くずから「Circulose」と呼ばれる溶解パルプをつくり、レーヨンなどの再生セルロース繊維の原料として供給してきました。しかし販売が想定を下回って資金繰りが悪化し、2024年2月に破産。同年6月にスウェーデンの投資会社Altorが資産を取得し、社名をCirculoseとして再出発しています。

技術としては成り立っていても、原料となる古着の回収・選別、再生材の価格、買い手の確保がそろわなければ事業として続けるのは難しい。二つの例は、その現実を示しているように見えます。

制度が回収の入口をつくりはじめた

仕組みの面では、ヨーロッパで動きがあります。EUは廃棄物枠組み指令を改正し、加盟国に2025年1月1日までに使用済み繊維製品の分別回収を整えるよう求めました。さらに2025年10月に発効した改正では、衣類や靴の生産者に回収・処理の費用を負担させる拡大生産者責任(EPR)の制度を、加盟国が2028年4月までに設けることになっています。

日本でも、国のプロジェクトとして混紡品のリサイクル技術の研究開発が進められており、繊維メーカー各社が参加しています。回収して、分けて、戻す。その各段階が少しずつ整いつつある段階といえそうです。

いまの私たちにできること

服を服に戻す技術は、まだ「どこまで来たか」を問われている途中にあります。だからこそ、リサイクルを当てにして手放すより先に、いま持っている服を長く着ること、着なくなった服を古着として次の人に渡すことが、確実に効果のある選択肢として残ります。

そのうえで、新しく服を選ぶときに洗濯表示の素材欄を少し見てみるのもよいかもしれません。単一素材の服は、いつか手放す日が来たとき、次の繊維に戻れる可能性を少しだけ多く持っています。

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