修理にお金が出る国——フランスの衣類リペア・ボーナス
穴のあいたセーターや、すり減った靴のかかと。フランスでは2023年から、こうした服や靴を直すと修理代の一部が割り引かれるようになりました。「直す」ことを社会で支える仕組みを見ていきます。
お気に入りの服に穴があいたとき、直すか、買い替えるか。迷ったすえに、修理代と新しい服の値段を比べて、買い替えを選んだことがある方も多いかもしれません。直したい気持ちはあっても、手間や費用が気になってしまうことはよくあります。フランスでは、その迷いに対して、国の制度として後押しをする仕組みが始まっています。
修理代が、その場で割り引かれる
フランスでは2023年11月7日から、衣類と靴の修理を対象にした「ボーナス・レパラシオン(修理ボーナス)」が始まりました。仕組みはとてもシンプルで、認定を受けた修理店で服や靴を直すと、修理代から一定の金額がその場で差し引かれます。利用する人が申請書を出す必要はなく、割引は請求書に明記されるとされています。
割引の額は、修理の内容によって約6〜25ユーロです。フランスの消費者団体UFC-Que Choisirの紹介によると、服ならほつれた縫い目の修理が6ユーロ、穴や裂け目の修理が7ユーロ、ファスナーの交換が8〜15ユーロ、裏地の張り替えが最大25ユーロ。靴では、かかとの先端部分の交換が7ユーロ、靴底の貼り直しなどが8ユーロといった具合です。修理代が12ユーロ以上であることが条件で、割引は修理代の60%までとされています。
お金を出しているのは、服をつくる側
この制度の財源は税金ではありません。フランス政府の行政情報サイトによると、修理ボーナスは、衣類・リネン・靴のブランドが支払う「エコ拠出金」でまかなわれる基金から出ています。フランスには、製品をつくって売った企業が、その製品が使われなくなったあとの処理にも責任を持つ「拡大生産者責任(EPR)」という考え方があり、衣類もその対象です。
運営を任されているのは、繊維分野の回収やリサイクルを担う団体「Refashion(リファッション)」です。2023年から2028年までに約1億5,400万ユーロの予算が用意され、修理される衣類と靴の数を2019年の約1,600万点から、2028年には約2,160万点へ、約35%増やすことが目標とされています。
2年間で、約170万回の修理
制度が始まって2年がたった2025年12月、Refashionは歩みをまとめて発表しました。報道によると、認定を受けた修理店は約1,500店を超え、約1,300万ユーロが支払われ、約170万回の修理がこの制度で支えられたとされています。
内訳を見ると、修理の約83%は靴の修理店によるもので、服の仕立て直しやお直しの店はまだ少ない割合にとどまっているようです。靴のかかとや靴底のように「直すもの」として定着している修理に比べて、服を直す習慣は、まだ広がる途中なのかもしれません。職人の担い手不足も課題として挙げられています。
直すことが「ふつう」になるために
フランスでは、年間約70万トンの衣類が捨てられているとされています。修理ボーナスは、その量を一気に減らす仕組みではありませんが、「直す」という選択肢を身近にするきっかけにはなっているようです。数ユーロの割引でも、直すか買い替えるかで迷ったときに、背中を押してくれることがあります。
日本には同じような制度はまだありませんが、町のお直し屋さんや靴の修理店は身近にあります。穴のあいたニットや、かかとのすり減った靴を、一度お店に持っていってみるのもよいかもしれません。一度直した服には、買ったときとは少し違う愛着がわいてくるはずです。
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