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ピーコート——海の上で生まれた厚手のコート

短い丈に、ダブルの前合わせと大きな襟。ピーコートは、甲板の風と寒さをしのぐための服として生まれました。少なくとも18世紀初めから記録に残るこのコートが、ほとんど形を変えずに着られてきた理由をたどります。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 長生きした服の物語

冬の古着屋でハンガーラックを眺めていると、紺や黒の、ずっしりと重い短いコートに出会うことがあります。ダブルの前合わせに大きな襟、ボタンには錨の模様。ピーコートです。手に取ると、思っていた以上に生地が厚く、重いことに驚くかもしれません。その重さには、海の上で着られてきた服ならではの理由があります。

名前は布から来ている

「ピー」という名前の由来には、主に二つの説があるとされています。ひとつはオランダ語(または西フリジア語)のpijjekker / pijjakkerに由来するという説です。英国の海事史研究誌『The Mariner's Mirror』の1975年の記事では、pij は片面に毛羽を立てた粗い綾織りの青い布、jakker は男性用の短く厚い上着を指すと説明されています。

もうひとつは、米海軍が支持しているとされる説で、水先案内人(パイロット)が着た厚手の生地「パイロットクロス」の頭文字 P から、P-jacket と呼ばれるようになったというものです。どちらの説でも、名前の起点は形ではなく布にあります。英語の pea-jacket という言葉は少なくとも1717年には使われていたとされ、アメリカの新聞にも1720年代には登場していたようです。

甲板で着るための形

ピーコートの特徴は、短い丈、広い襟、ダブルの前合わせ、そして二列に並んだ大きなボタンです。前を深く重ねるダブルの合わせと、立てれば首元まで覆える大きな襟は、甲板に吹きつける風を防ぐためのつくりです。

生地も、風を通さないことが重視されてきました。20世紀には、風雨をはじく密度をもった紺色のカージーウールが標準とされ、米海軍では1970年代にかけて、より粗い黒のメルトンへと移っていったとされています。メルトンはウールを強く縮絨(しゅくじゅう)させて目を詰めた生地で、その代わりに暖かさを補うためのキルティングの裏地が付けられるようになったようです。

風を通さない布と、風を入れない形。それだけで成り立っている服です。

支給品から「選べる服」へ

米海軍では長くピーコートが水兵の防寒着として支給されてきました。その扱いが変わったのは最近のことです。2016年夏、米海軍人事司令部は、ピーコートを2018年10月1日から任意の装備とし、制服用の防寒着を黒のコールドウェザー・パーカーへ切り替える方針を発表しました。水兵の負担を減らし、より用途の広い上着にするという理由です。

この方針には反対の声もありました。米下院軍事委員会からは、伝統的なピーコートの改良や代替案、国内の繊維産業への影響を検討しないまま決められたのではないか、という懸念が示されています。当時、ボストンのメーカーが2015年に最大4,800万ドル規模の契約を結んでピーコートを製造しており、ニューイングランドの毛織物産業への影響も話題になりました。支給されなくなった後も、ピーコートは任意の品として購入して着ることができるとされています。

古着として残る理由

軍の支給品だった服は、放出品として市場に出回り、やがて街で着られるようになります。ピーコートも、そうして船の外へ出た服のひとつです。古着屋で見かける一着の中には、実際に海軍で支給されたものもあれば、その形を受け継いで作られたものもあります。

重く目の詰まったウールは、毛玉や擦れは出ても、大きく形が崩れにくい素材です。ブラッシングで表面を整え、湿気を避けて保管すれば、長く着続けることができます。ボタンが取れたり裏地が傷んだりしても、直せる部分がはっきりしているのも、ピーコートが長生きしやすい理由のひとつかもしれません。

300年ほど前から記録に残り、海の上の必要から決まった形は、今もほとんど変わっていません。用途が変わっても形が変わらない服は、流行に合わせて買い替える必要がありません。古着屋の重いコートを手に取ったときには、その重さが、風の中で働いた人たちのために選ばれたものだったことを思い出してみてください。

出典・参考: Wikipedia — Pea coat / Navy Times — Lawmakers push back against Navy peacoat changes(2017)
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