LONG LIFE STORY寿命 40年〜

シャンブレーシャツ——作業着から日常着になった青いシャツ

デニムと同じ青なのに、薄くて涼しい。色糸と白糸を平織りにしただけの布が、船の上の作業着を経て、いまも古着屋の棚に並んでいます。地味な布が長く残った理由を、織りと歴史からたどります。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 長生きした服の物語

古着屋のシャツコーナーで、デニムよりひとまわり薄い青いシャツを見かけることがあります。襟は小さく、胸にポケットがふたつ。生地を近くで見ると、青と白の糸が細かく交互に並んでいて、遠目には霜がおりたような淡い青に見えます。これがシャンブレーです。派手な装飾はありませんが、1960年代や70年代に作られたものが、いまも着られる状態で流通しています。

シャンブレーとデニムの違いは「織り方」

シャンブレーは、色糸(多くは青)を経糸に、白い糸を緯糸に使った平織りの布です。平織りは、経糸と緯糸が1本ずつ交互に交差するもっとも単純な織り方で、表にも裏にも同じように色糸と白糸が出ます。そのため表面は細かな霜降り状になり、全体としては淡く柔らかい青に見えます。

いっぽうデニムは、同じく色糸の経糸と白い緯糸を使いながら、綾織りで織られています。綾織りでは経糸が表に多く出るため、表は濃い青、裏は白っぽくなります。糸の組み合わせは似ているのに、織り方が違うだけで、厚みも色の出方も別の布になるのです。シャンブレーはデニムより薄く、通気性があり、夏の作業着に向いていたとされています。

フランスのカンブレーから、名前だけが渡った

シャンブレーという名前は、フランス北部の都市カンブレー(Cambrai)に由来するとされています。この町は16世紀ごろから、キャンブリック(cambric)と呼ばれる目の細かい白いリネンの布で知られていました。英語の「シャンブレー」という綴りが広く使われるようになったのは、1800年代前半のようです。

もともとは上質なリネンだった布が、綿に置き換わり、色糸を使うようになり、丈夫で安価な作業用の生地になっていきます。名前は町の名前のまま、中身は貴族のハンカチから労働者のシャツへ。布の格は下がったのに、寿命は延びたというのが、この布のおもしろいところです。

アメリカ海軍の作業着として

シャンブレーが「働く服」の代名詞になったのは、アメリカ海軍の作業着に採用されたことが大きいとされています。海軍はデニムの作業ズボン(ダンガリー)と組み合わせる上衣として青いシャンブレーシャツを採用し、その時期は1901年、あるいは1913年と資料によって記述が分かれますが、いずれにしても1900年代初頭から使われていたようです。

第二次世界大戦中、海軍の人員は1939年の約12万5千人から1945年には約338万人まで増えたとされ、シャンブレーシャツも多くの工場で大量に作られました。1942年には、胸ポケットのフラップを省いて青いボタンに統一するなど、作りが簡略化されたという記録があります。この時代のシャツは、ゆったりした直線的なシルエットと、ふたつの胸ポケットが特徴です。海軍での使用は1999年まで続いたとされ、ひとつの作業着としてはかなり長い現役期間でした。

船の上で何年も洗われ、乾かされ、また着られた。その繰り返しが、この布の設計そのものでした。

「ブルーカラー」という言葉のもとになった布

シャンブレーは海軍だけでなく、鉄道や工場、農場で働く人たちのシャツにも広く使われました。青いシャツを着て働く人たちを指す「ブルーカラー」という言葉は、こうした青い作業用シャツから生まれたと言われています。汚れが目立ちにくく、薄くて乾きやすく、破れても縫い直せる。働く人の都合だけで選ばれた布でした。

平織りの生地は構造が単純なぶん、擦り切れても当て布をしやすく、ボタンが取れても付け替えやすい。直しながら着ることが前提になっている服は、寿命の上限が決まりません。古着屋で見つかるヴィンテージのシャンブレーに、襟や袖口の当て布が残っていることがあるのはそのためです。

作業着が日常着になったあとで

戦後、海軍の放出品や作業着として作られたシャンブレーシャツは、そのまま街で着られるようになりました。デニムと同じ青でありながら、薄くて軽く、ジャケットの下にも着られる。作業着の機能がそのまま日常着の使いやすさになったのです。いまでは多くのブランドがシャンブレーシャツを作っていますが、基本の形は海軍の作業シャツからほとんど変わっていないように見えます。

シャンブレーが40年以上生きられるのは、特別な技術があるからではなさそうです。単純な織り、単純な形、直しやすい構造。流行のために足されたものがないぶん、流行が去っても残るものがありました。古着屋でシャンブレーシャツを手に取ったら、糸の青と白の並びを近くで見てみてください。その単純さが、この服が長く残った理由です。

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