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カバーオール——鉄道員や工員が着た作業着

シャツのような形で、ポケットが大きく、少しゆったりしている上着。鉄道や工場で働く人の服が、なぜ今も古着屋の棚に並び続けているのでしょうか。形に残った理由をたどります。

/ FURUGI LOOP 編集部 / 長生きした服の物語

古着屋のアウターの棚に、「カバーオール」と札のついた上着が並んでいることがあります。シャツのように前をボタンで留める形で、胴まわりにはゆとりがあり、胸と腰に大きなポケットがついています。色の抜けた青いデニム、細い縞のヒッコリー、茶色のダック。どれも、もとは仕事のために着られていた上着です。

カバーオールとは——名前の少しややこしいところ

ファッション用語としてのカバーオールは、もともと作業用のジャケットを指す言葉で、現在はシャツジャケットのような簡便な上着まで広く含めて呼ばれています。日本ではとくに、ジャケット丈のワークウェアを指すことが多いようです。

一方で、複数形の「coveralls」は上下がつながったつなぎ服を意味します。海外の古着を探すときに同じ言葉で検索すると、つなぎが出てくるのはこのためです。形の近い上着は、英語では「chore coat(チョアコート)」と呼ばれることもあります。

鉄道員の制服と、線路のそばの作業着

カバーオールがいつ生まれたのかには諸説あり、18世紀とも19世紀とも言われています。ヨーロッパでは19世紀のフランスで、労働者や鉄道員、農家の仕事着として広まったとされ、これは以前紹介したブルー・ド・トラバイユにつながる流れです。

アメリカでは、1870〜80年代の鉄道建設で線路を敷く人たちが着ていたと紹介されることがあります。また、1920〜30年代の大陸横断鉄道の鉄道員が着た制服は「レイルローダージャケット」と呼ばれ、カバーオールの原型のひとつとされています。青いデニムでつくられることが多く、大きなポケットを備えていました。

鉄道と作業着の結びつきは、メーカーの歴史にも見られます。カーハートの創業者ハミルトン・カーハートは、鉄道機関士との会話から丈夫な作業着の必要性に気づき、1889年に鉄道員向けのオーバーオールを最初の製品にしたと伝えられています。古着の世界では、アメリカの鉄道会社ノーフォーク・アンド・ウェスタンの公式ユニフォームだったカバーオールが紹介されることもあります。

服の上に羽織るための余白が、そのまま、次の持ち主の余白になりました。

リーとカーハートが整えた形

リーは1913年に、上着とズボンを腰で縫い合わせた「ユニオンオール」をつくり始めました。農場や工場で働く人の服と肌のあいだに、汚れが入るのを防ぐための服だったとされています。その後1925年には、オーバーオールの上に着る上着として、のちに「91-J」と呼ばれるデニムジャケットを発売しました。

この上着には大きな貼り付けポケットが4つと、内側の胸ポケットがありました。内ポケットには鉄道の運行日誌を入れられたため、機関士にとっても実用的だったと報じられています。はじめは農家に向けて売られ、数年後には鉄道で働く人が広告に登場するようになりました。基本の型とつくりは、1982年までほとんど変わらなかったそうです。

カーハートでは、1917年の広告に、のちのチョアコートと多くの特徴が共通する上着が載っています。1920年代のカタログには「エンジニア・サック・コート」という名前の上着が見られ、1928年ごろには、今ではこの形の代名詞となった茶色のダック生地でもつくられるようになったと紹介されています。

ポケットと生地に残る、仕事の理由

カバーオールのゆったりとしたシルエットは、体の動きを妨げないためのものです。丈が少し長めなのは汚れから身を守るためで、ポケットが多いのは仕事道具を入れるためだと説明されています。左右で形の違うポケットを持つ個体は「ガチャポケ」と呼ばれ、古着好きのあいだで人気があるようです。

生地にも理由があります。デニムのほか、ヒッコリーの縞は汚れを目立たせにくい柄とされ、ダックは厚手のキャンバス生地です。デニムのカバーオールはデニムジャケットより生地が薄いものが多く、色落ちは控えめな一方で、軽くて着やすいと言われています。

年代を読む手がかりもあります。台襟についた「チンストラップ」と呼ばれる持ち出しは1940年代までのものに多く見られるとされ、古い一着を見分けるときの目安になっています。

なぜ古着の定番になったのか

カバーオールが古着の定番として残っている理由は、ひとつではないように思います。もともと服の上に羽織る前提なので、サイズや体型をあまり選ばず、重ね着もしやすいこと。丈夫な生地と縫製が、長い着用に耐えてきたこと。そして、同じ形が長くつくられてきたため、古い一着が今の服の中に入っても浮きにくいことです。

古着のカバーオールを手に取ったら、ポケットの口や袖口を見てみてください。擦れや色の抜け方に、前の持ち主が何を入れ、どう働いていたのかが少しだけ残っているかもしれません。仕事を終えた服が、別の人の毎日の上着としてもう一度働き始めています。

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